子どもの自己肯定感を高める子育てコーチングとは

子育ては正解がなかなか見えず、「こんな子どもに育ってほしい」という理想を持っていても日々、目の前のことに追われてしまいがちになってしまうかと思います。理想の子育てにもさまざまな方法があるかと思いますが、最近注目されている一つの子育て法が子育てコーチングです。

子育てコーチングとは、子どもの心情に寄り添って、子どもを一人の人として認め、対等に近い関係で目標達成に向けて子育てをする方法のことです。子育てコーチングの手法を用いることで、子どもに自信を持たせ、自己肯定感を高められる、といわれています。また、自己肯定感の高い子どもは他人に優しく思いやりを持った行動ができる、といわれています。

今回の記事では、子どもの自己肯定感を高める子育てコーチングのマインドについて解説します。

 

■目次

子どもの自己肯定感を高める子育てコーチングのマインドとは
1、自信と自己肯定感とは 2、子育てコーチングとは 3、まとめ

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1、自己肯定感とは

2015年に内閣府が「日本の子どもは諸外国に比べて自己肯定感が低い」という調査結果を発表しましたので、「自己肯定感」という言葉を耳にしたことのある方もいらっしゃるかもしれません。子育てコーチングによって育むことが期待される自己肯定感について解説します。

 

1-1 自己肯定感と自信について

自信と自己肯定感は、似た言葉なのでよく混同して使用されますが、厳密には意味の異なる言葉です。両者の意味は以下の通りです。

自信:自らの能力や価値などを信じること
自己肯定感:自らをかけがえのない存在として認めること

例えば定期テストの場面で自信と自己肯定感は以下のような違いがあります。

(自信がある場合)
テストを受ける前:今回のテストは高得点が取れるはずだ。
テストの結果が望ましいものではなかった時:本来の自分はこんなはずではない。次は必ず高得点を取らなくてはならない。

(自己肯定感が高い場合)
テストを受ける前:今回のテストで今の私の実力をはかってみよう。
テストの結果が望ましいものではなかった時:今回の結果は残念だったな。今回点数が低かったのは、ケアレスミスが多かったのと、単語の暗記が追い付かなかったことが原因だ。

上は少し極端な例ではありますが、全く別物の感情であることはご理解いただけるかと思います。自信・自己肯定感ともに高いケースもありますし、考え方には個人差があると思いますが、自信の場合には「できる」という結果を信じている一方、自己肯定感は自分自身のありのままの状態を受け入れるという違いがみられます。モチベーションを持って困難な課題にチャレンジするには自信がより重要になりますが、チャレンジがうまくいかない時、自己肯定感が低いと大きな挫折につながる恐れがあります。逆に、自己肯定感が高い子どもは、自らの課題を客観的に把握し、やるべきことに取り組んでいくことができます。

 

1-2 自己肯定感は成績に直結する⁉

2017年に文科省が「自己肯定感の高さは学力に影響する」という報告をまとめました。自己肯定感が高い生徒の方が、低い生徒に比べて、テストの正答率が高いという調査の結果に基づいた報告です。また、同時にアンケート調査によって、自己肯定感の高い生徒の方が勉強好き、というデータも報告されました。

それらの調査結果に基づいて、文科省では自己肯定感を高めることを教育指導方針の重要項目としています。

また、東京大学社会科学研究所と教育大手のベネッセ教育総合研究所が2015年~2017年にかけて共同で行った調査においても、自己肯定感の高い子どもが良い成績を収めていることが報告されています。

こちらの研究結果での注目ポイントは、3年間で成績が上昇した子どもは、成績上昇に伴い自己肯定感も上昇している傾向がみられることです。
また、自己肯定感を常に保っている子どもは約3割に限られており、約半数の子どもが肯定から否定、否定から肯定のいずれかへと変化しています。成績さえ高ければ自己肯定感が高いから安心してよいというわけではなく、動機づけや褒める姿勢など、家庭でもお子様の状態を把握して働きかける意識が重要であるといえるでしょう。

1-3 自己肯定感が高くなることのメリット

成績の向上以外にも自己肯定感が高くなることのメリットはあります。具体的には、以下のようなメリットが考えられます。

  • 思いやりをもった優しい性格になる
  • わがまま、自己中心的にならず、他人に配慮した行動ができる
  • 精神的に余裕があり、トラブルや緊急時にも落ち着いた行動ができる
  • 他人の評価を気にしすぎたり、顔色をうかがったりせずに自信をもって行動できる
  • 他人から好意を受けたときや自分のことを思って叱ってくれた時に素直に受け取ることができる

自己肯定感を高めることのメリットがとても幅広い範囲に及ぶことがお分かりいただけるかと思います。

 

1-4 自己肯定感の高め方

自己肯定感を高める方法はどのようなものがあるでしょうか?
自己肯定感は自信や承認欲求などの気持ちと関連性が強いといわれています。承認欲求とは、他人(親や先生、友だち)から認められたい、という気持ちです。自信のなさの反面、他人から良い評価を受けたいという気持ちが強くなりすぎてしまう、ということです。

したがって、承認欲求を満たして、子どもが自信を持てるように接することが、自己肯定感を高める効果的な手法と考えられます。そして、子どもの承認要求を満たす指導方法の一つが、家庭での子育てコーチングです。

家庭で、自己肯定感を高めるためにヒントになりそうなデータが2つあります。先ほどの東京大学社会科学研究所と教育大手のベネッセ教育総合研究所の研究結果にて報告されていることですが、1点目は保護者がお子様の努力の結果を信じているほど、お子様の自己肯定感が高まりやすいということ、2点目は将来の夢が明確化している子どもほど自己肯定感が高まりやすいということです。

承認要求を満たすことはやや漠然としていてイメージしづらくても、お子様の努力の結果を信じること、お子様と将来の夢について話をすること、は具体的な行動なので、はじめやすいのではないでしょうか?

 

2、子育てコーチングとは

子育てコーチングとは、最近になって注目されている家庭での子育て、指導方針のことです。どちらかといえば、決まった方法があるというよりは、子どもに合わせて「こういった考え方で子どもと接するといいよ」という接し方や考え方に関するものですが、育児に子育てコーチング手法を取り入れて、楽になったという保護者の方の声が数多く上がっています。

 

2-1 コーチングとは

コーチングは、ビジネスの場面で多く使用されてきた考え方です。
コーチングの定義は以下の通りです。

コーチング:目標達成に向けて、コーチがクライアントのサポートを行うコミュニケーションスキル

家庭でコーチングを行う場合、クライアントはお子様、コーチは保護者の方々です。

親子が上下ではなく横並びの関係に立って成績向上や大会での好成績などの目標に向けて共に歩んでいく、という指導プロセスになります。プロセスとは、「物事を進める手順・進め方」のことです。マニュアルや方法のようにやり方が細かく設定されているというわけではありません。コーチングは「やり方」ではなく、「マインド=考え方」が重用、ということです。

親子で一緒に目標を共有し、子どもが主体となって対話を重ね、達成に導こうとする考え方が子育てコーチングです。

 

2-2 子育てコーチングの3大スキル

子育てコーチングは「考え方」ということを述べましたが、具体的なスキル=技術もあります。

一般的なコーチングと同様ですが、基本の3大スキルがコーチングの土台となります。

 

承認=認める

承認とは、お子様の意見や主張をありのまま受け入れることです。

お子様の自主性ややる気を認め、やりたいようにやらせてあげることによって、子どもは自信を強め、主体的に物事に取り組む意欲を持つことができます。(まさに、お子様の承認欲求を満たす行動です)。状況に応じてお子様を褒めること、非難や否定をしないこと、お子様の行動に対して感謝を伝えること、などが承認をうまく行う秘訣です。

 

傾聴=聴く

子育てコーチングにおける「聴く」は、一般的な「聞く」よりも、もう一歩踏み込んだ状態が望ましいものです。お子様と目線を合わせ、お子様の話に対して関心を持っているという態度をはっきりと表して話を聞くことが重要になります。承認の場合と同様ですが、お子様の考えを否定せずに、気持ちを寄り添うことが重要になります。

 

質問

お子様の言葉を傾聴し、承認するには、お子様からの発信を待っているだけではなく効果的に質問を繰り返すことも重要です。
お子様の考えや主張に対して、「なぜそう思うの?」「テストで良い点数を取れなかったのは何が足りなかったの?」と質問を繰り返すことで、お子様本人も気が付いていなかった内面の気持ちに気が付けることがあります。
注意したい点としては、「Yes/No」だけで答えられる質問ばかりにしないことと、望ましくないことを聞くときにもお子様を非難しないこと(=承認の姿勢を取ること)です。

 

2-3効果的な子育てコーチング

子育てコーチングには、3大スキル以外にもさまざまな方法があります。

また、これらのコーチングスキルにおいてはお子様の性格や課題、状況に応じて最適な態度の取り方が変わります。この章の冒頭でお伝えした通り、子育てコーチングはプロセスであり重要なのは考え方なので、子育てコーチングを始める際に最初に注意すべきことは「お子様の心情に寄り添う」・「お子様と目標を共有し、横並びの立場になって達成を目指す」という姿勢です。

子育てコーチングの手法に縛られすぎてしまうと、叱ることに対して保護者の方が罪悪感を持ってしまったりお子様との自然な距離感を見失ってしまったりするなど、逆に育児の方針に迷ってしまう方も見えます。子育てコーチングの原点は、あくまでマインド(考え方)である、ということを常に意識しておきましょう。

 

2-4 子育てコーチングで自己肯定感を高められる理由

子育てコーチングの手法を用いることで、お子様の自己肯定感を高められる理由は以下の通りです。

    • 承認や傾聴を通じてお子様の承認欲求が満たされる

 

    • 承認や傾聴によってお子様の承認欲求が満たされることで、自己肯定感の高さにつながります。

 

    • 他にも褒められることや感謝の気持ちを伝えられることも、お子様が自分自身のかけがえのなさを認識するために重要な行動です。自己肯定感が高まってくると褒められたときや好意を受けたときに素直な気持ちで受け止められるので、さらに自己肯定感が高まる好循環が生まれます。

 

    • 子育てコーチングによってお子様の主体性が育まれる

 

    • コーチングは、対話を積み重ねることでお子様の内面から答えを引き出す手法です。例えば、「宿題をしなさい」といった上からの命令ではなく、「次のテストで良い点を取るためには、毎日の宿題をやらなければならない」と子ども自身が主体的に解決策を見出していきます。コーチングを通じて主体的に課題を解決することを習慣化できます。主体的な行動は、他人からの指示や評価を気にしすぎない、自己肯定の態度につながります。

 

3、まとめ

この記事では、自己肯定感と子育てコーチングについて解説しています。
日本の子どもは諸外国に比べて自己肯定感が低いというデータが発表されており、文科省でも自己肯定感を高めることを教育の重要課題の一つとしています。

保護者の方にとって、「こういう子どもに育ってほしい」という理想は様々かと思いますが、さまざまなアンケートを見ていますと、「思いやりのある子になってほしい」、「自信を持った自立した子どもになってほしい」、「他人に優しい子どもになってほしい」という項目がいつも上位にランクインしています。

これらのすべてに良い影響を及ぼすとされているのが、自己肯定感の高さです。子育てコーチングを家庭での指導方針に取り入れることで、効果的に自己肯定感を高められることが期待できます。子育てコーチングを実践するうえで重要なことは、3大スキルなどのテクニックを知ることも重要ですが、それ以上に「子どもの心情に寄り添う」というマインドを常に意識することです。