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tyotto流・年末の学習塾運営リフレクション【教室長編】

いよいよ今年も残すところあと2日となりました。受験を間近に控えた受験生たちに休みはありません。冬季講習・正月特訓等のイベントを行って最後の追い込みを支援している学習塾も多いかと思います。

さて、そんな国民全体の休み期間でも休まない私たちですが、それでも作業の内容は年末年始っぽいことをします。

今年一年間を振り返ってよかったのか、悪かったのか。なぜそうなったのか。来年はどうしていくのか。要はリフレクションですね。生徒たちにやるように言っている事を自分たちでやるだけです。今回は私たちが毎年行っているそのリフレクションの内容を簡単にご紹介します。

年末のリフレクションの内容は特に塾として決めているわけではありませんが、ご紹介するに当たってまとめてみたらかなり幅広いものになってしまいました。長文になりますが特別編ということでご容赦ください。

教務

今のカリキュラムで生徒の成績は上がっているのか?

私たちの考えとして、大学に進学することや偏差値を上げることは必ずしも必要ではないというものがあります。

自分たちのやりたいことを自分たちで考えた結果目指したいと思った進路を選ぶために大学受験が必要なら、それを支援するという形を取っています。

以前はプログラミングコースを設置して、高校生・大学生にプログラミングを教えていたこともありますが、今は学習塾に絞っているので、進路を考えた結果受験に向けて頑張ると決めた生徒さんが在籍する形となっています。

さてそうなると、やはり気になるのが「成績が上がっているかどうか」です。成績が上がるという言葉は抽象的で、偏差値が上がることなのか、点数が上がることなのか等いくつか解釈できてしまいます。

私たちは他者と比較して成績が上がっているのかという部分には着目せずに、学習そのものがどれくらい進んでいるかを見ています。

取り組んでいる参考書に対して習熟度が上がっていけば、偏差値は必然的に上がっていきます。

年末のリフレクションでは、その習熟度が今のカリキュラムで上がっているのかを見るためにどんな指標を追っているのかを確認します。

  • 小テストの点数
  • 過去問演習の点数
  • 模擬試験の点数

こういった数字を指標として見たときに成績が上がっているのかを改めて見直します。

今のカリキュラムで成績が上がると感じているのか?

次に、より直感的に振り返りを行います。「自分が受験生だったら、今の指導方針で成績が上がるだろうか?」という問いかけを自分にしたとき、違和感があればそれを探っていきます。

現役時代の自分と何が違うのだろう?その違いが本当に違っているのか確かめる術はなんだろう?その違いを加味して、指導方針を改定するならどうしたらよいだろう?

このような問いかけをひたすら頭の中で進めていくイメージです。

塾運営をしていて、実際に自分が勉強する立場にない状態で勉強というものと向き合っていると、どうしても理想論が先行しがちです。肌感覚が薄れていくことで、「論理的に考えて行けるはずだ」という考えが先行してしまい、無茶な課題の量やペース配分の計画を作らせてしまうことも十分あり得ます。

理論的に考えた「どうしたら成績を上げられるか」と直感的に考えた「どうしたら成績を上げられるか」のギャップを見つめ直すことで、改善点が見えてきます。

生徒対応

来校した生徒全員とコミュニケーションを取ることができているか?

オンライン指導塾やeラーニングサービスが徐々に広まってきた今、学習塾として教室を持つことの価値は以前まとめました。その延長ですが、やはりせっかく生徒が教室に来てくれたのであればそれ相応の価値を提供すべきだと考えています。

教室に来て、対面できるからこそできる価値提供とは何か?と考えたときに、やはり生徒の顔や仕草を見てちょっとした反応を受け止めつつコミュニケーションを取ることだと思います。

何も全員と数十分会話する必要はありません。来校した生徒が前を通るときにちょっと声をかけて、生徒さんに話してもらうだけです。

Withdomに関わっている生徒たち・講師さんは馴染み深いと思いますが、基本「最近どう?」と聞きます。

この「最近どう?」という質問は面白いもので、最初にこの質問を投げかけられると「何に関して聞かれてるの…?」という感じのリアクションが返ってきますが、それが日常となってくると端的に自分の近況や気になっていることを話せるようになってきます。

生徒たちも勉強にもしっかり取り組みたいという意識をしっかりと持ちつつ、せっかく教室に来たからには先生と話したいという思いも持っているので、自然とコミュニケーションの質が上がっていきます。

これは単に成績を上げるという面以外でも素晴らしい教育を提供できていると思います。

解決策を与えるのではなく、問いかけベースで気づかせることを意識できたか?

生徒さんが抱えている悩みは勉強のわからない点から日常の人間関係まで幅広いです。その幅広い悩みを解決する方法を、一人の教室長が知っているということはまずありません。

自分の経験を元に抽象化した考えを元にアドバイスをすることはできますが、時代が大きく変わっている今、世代も違う彼ら彼女らにとって有効なアドバイスになるかというと自信がなくなってしまいます。

やはり、当事者の問題解決を支援する方が得策です。どこで困っているのか、どういう解決策を考えてどう試してみたのか、改めて考えるとどうしたいのかを丁寧に聞いてあげることで、勉強面でもその他の面でも生徒自身が悩みの解決策に気づいていくことが多々あります。

もちろん、正解に向けて誘導するわけではありません。勉強内容の質問など、この時期だと入試問題レベルの問題を解いていることが多いので、パッと見せられても内容を把握するので数分はかかってしまい、解答を導き出すまでにはもっと時間がかかります。それをするより、生徒自身に状況を話してもらい、半ば解説してもらう勢いで聞いていくことで解決に近づくことも大いにあります。

「先生だからなんでも瞬時に答えられなければならない」という考えが固まったFixed Mindset状態だと、なかなかこの対応はできません。

生徒たちにとって悩みを解決することが目的ならば、その支援をすることも価値があり、またそれで十分でもあります。

生徒対応を改善できているか?

生徒対応は雑談ではありませんし、娯楽でもありません。入塾希望者面談で生徒・保護者と約束した内容を履行するために日々誠心誠意対応する義務があります。

コミュニケーション一つとっても、改善の余地はいくらでもあります。

  • どのような伝え方をしたら相手がより理解してくれるのか?
  • どのような伝え方をしてしまうと相手のモチベーションを削いでしまうのか?
  • どのような質問をすれば生徒の課題をより正確に、素早く理解することができるのか?

こういった項目を常に意識して対応して、改善していくことが必要です。

生徒対応はつい誰でもできそうだと思われがちですが、そうではないですし、そう思われているようではいけません。

コミュニケーションという領域の性質上、ある程度感覚でもできそうだと思われてしまうのは仕方ありません。しかし、逆を言えば感覚でできない高度な領域だと主張するならば体系化して見せなければ結局自分もできていないのと同じです。

自分たちの塾の教育方針に沿った対応とはどのようなものなのか?という問いを投げかけることによって、自然とちょっとした会話の中での伝え方や、身だしなみ、姿勢、顔つきなどが変わってきます。

講師採用

明確な理想像を持って採用面接に臨むことができているか?

組織にとって採用は極めて重要な項目です。経営者は人事でしか語れないと言われるほどに、どのような人を入れてどのような人を入れないのかに組織の方向性が左右されます。

一般的に悪くなさそうな「勉強を教えるのがうまい人を採用した」という採用事例は、実際にはその塾の教育理念に照らし合わせて初めて「良い」か「悪い」か判断できます

となると、企業理念・教育方針を明確に持てていることは必須です。

その上で、どのような人物を招き入れればよりその理想像に近づくのかを常に考えて形式知に変換していかなければなりません。

どのような人物を招くか、をどの程度具体化すれば良いのかが難しいところです。人が持っているスキルを全て項目化して、それを元に理想像の項目の評価値を作って採用面接に臨むという流れは現実的ではありません。

必須なスキルの部分は重点的に具体的な経験や能力の部分で判断するとして、価値観の部分は丁寧に引き出しつつ、見定めていく必要があります。

そもそも論ですが、採用とは求職者と企業のマッチングだと考えています。求職者がエントリーしてきたのに対して良いか悪いかで入れる入れないを決めるというよりは、求職者のやりたいことと、企業側のやってほしいことがマッチするかをすり合わせることができたら一緒に働くことを決めるというイメージです。

そのすり合わせを正確に行うためにも、企業側には自分たちのやりたいことをしっかりと明文化して、語れるようにしておくことが求められます。

採用後も含めて見たとき、正解だったと言えるか?

人事に関してもリフレクションをする必要があります。面接のときには求職者と教室の条件がマッチしていたとお互い感じていても、働くうちにズレが生じないとも限りません。むしろ全くズレが生じないほうが珍しいでしょう。

採用した講師に対して、例として以下のような観点で振り返りを行い、今後の採用の改善に繋げます。

  • その人を採用したときの基準は問題なかったのか
  • 他に採用基準を増やした方がいいのか
  • 増やすとしたらどんな基準を増やして、どう問いかけに落とし込むべきか
  • 逆に減らした方がいい採用基準はあるのか
  • 雇用条件はこのままで良いのか

人は変わることができるので、採用基準が甘くて理想像とは違った人物像の講師が入ってしまっても理想に近づいてもらうことは不可能ではありません。

しかし、教育にかかるコストや、その間の生徒たちへの影響などの優先順位を元に決める必要があるため、採用の段階で理想像に近い人を選べることがより好ましいと考えています。

既に採用して働いてもらっている人に対してでも、今後の方針に沿った働き方ができていなくて、今後も改めるつもりがないのであれば離れてもらう必要があります。

生徒たちへの価値提供を第一に考えたとき、情に流されて判断を誤ってしまうことはあってはなりませんし、方針に沿わない状況で働く講師にとっても人生の貴重な時間をかけるに値しない職場ということは間違い無いでしょう。

人の上に立つ人は、相応の責任を背負い判断を下す強さが求められます。

講師マネジメント

講師さんと本当の意味でのコミュニケーションはとれているか?

家庭教師という形ではなく、学習塾という形態で働いてもらっている以上、その組織としての方針に沿って指導してもらったり、その方針自体をアップデートしていくのに力を貸してもらったりすることを求めます。

それらを実現するためには、講師とのコミュニケーションをしっかりとることしかありません。

そして、コミュニケーションとは単に会話をすることではありません。お互いの考えていることをしっかり伝え合って、考えのズレがあればその原因を探り、解決策を一緒に探っていくような深い対話が必要です。

tyottoでは、今ビジネス業界で流行りの1on1ミーティングという名前でちょっとイケてる感も演出しつつ深いコミュニケーションの機会を作っています。

1on1ミーティングで把握する内容は主に次のような内容です。

  • 塾講師としての生活はどうですか?楽しめていますか?
  • 今指導や生徒対応で困っていることはありますか?
  • 困っていることに対して、私たちの助けは必要ですか?
  • 他の場所でアルバイトをするのではなく、うちを選んでくれているのはなぜですか?
  • これからどうしていきたいですか?

もし、講師の働きに満足いかない場合は、それを正すのが上司である教室長の役目であり、人を雇用する上での責任です。

良いと思っていない状況を放置することは他責的考え方であり、組織の誰にとってもメリットがありません。懸念対象の講師自身、悪気なくとった行動が塾の方針とずれてしまっていることだった十分あり得ます。

まずはコミュニケーションをしっかりとることが何より大切です。

そして、講師の働きに満足いかない場合の正す方法は、講師に行動を改めさせることだけではありません。丁寧に講師の考えを聞いていけば、そこに何か教室をより良くする方法が潜んでいるものです。それを引き出して、教室の仕組みを変えることで講師の働きを満足いくものと捉え直す形の「正す方法」も確実に存在します。

どのような付加価値を提供できているか?

学習塾は全国に数万教室もあり、大手予備校から1教室だけの個人塾まで様々です。家庭教師として直接生徒と契約を結んで勉強を教えるということだって可能です。そんな中、自分たちの教室を選んで働いてくれている講師たちに何が還元できるかを考えます。

付加価値でなく、給与額で還元すべきという考え方もあるかと思いますが、時代はそうではありません。

給与額だけで言えばより高いところは探せばいくらでもでてきますし、そもそもより効率的にお金を稼ぎたいとなれば塾講師以外の選択肢の方が可能性が高いと考えています。

アルバイトとして、塾講師として働くことに加えて、何か自分たちの塾で働いていることで価値を提供してあげられないかと日々考えています。

生徒の集客

自分たちが提供したい教育を求めている層にリーチできているか?

塾を自分たちのブランドでやる以上、そこには必ず目的があるはずです。どういう層にどのような教育を与えてどうなって欲しいのかを常に明確にしつつ、それを求めている生徒たちに知ってもらう必要があります。

自分たちが提供したい教育を求めている層に適切にアプローチできないと、ここでもズレが発生してしまいます。

とりあえず学校のテストでの偏差値を上げたかったのに、受験に向けての課題ばかり出される。受験に向けて勉強したかったのに、大学進学以外の道を強く進められる。

結局塾での集客も生徒側と教室側のマッチングであると考えています。求めている教育と提供できる教育がマッチするかどうかで、一緒に頑張るかを決めてもらいます。

自分たちが提供したい教育を求めている層に適切にリーチして、しっかりとその教育を提供することができれば、無理に人を集めるなんてことをしなくても自然と人が集まってくるようになります。

ミスマッチによって時間とお金を無駄にしてしまうような事態を減らし、本来の教育価値の提供に時間を割けるよう、集客も適切な方法で行う必要があります。

意識・向き合い方

報告・連絡・相談を徹底することができたか?

ビジネスマンの基本「報告・連絡・相談」は学習塾運営であっても大切です。現場がどんな状態なのかを具体的に報告し、問題が発生しそうなケースで適切に相談することが教室長としての役割です。

報告先は基本的に上司である塾長かエリアマネージャーではないでしょうか。

逐一聞かれたら答える、ではなく、公開すべき情報は(社内の)誰でも閲覧できる状態に整理しておけばスムーズです。

課題等も実際に問題として表面化する前に相談しておくことで、俯瞰的に見たダメージを防いだり、そもそも問題に繋がる前に収束させられたりします。

特に、好ましくない状況であればあるほど早めの報告や相談が必要です。自体がおおごとになってから相談したのであれば、既に組織としてダメージが発生してしまっていることに対する責任を問われてしまいます。

早い段階で報告・相談することで、共有しなかったことに対しての責任を問われることは無くなります。好ましくない状況を生んでしまったのが自分の責任だったとしても、それを最小限に食い止めようとしたか、それとも隠蔽しようとして取り返しのつかない状況にしてしまうかはまた別問題です。

状況を客観的に見て、個人的な見方にとらわれず適切な報告・連絡・相談を日々行えているかは特に重要な振り返りポイントです。

業務における指示を責任を持って遂行できたか?

上司が最終的に決定を下した方針に対して、しっかりと行動で従うことができたかどうかも大切です。

「上がやれと言うからやろうとしたけど、うまくいかないのでなあなあになってしまっている」

「上がやれと言うけど、なぜそれをやる必要があるのかわからないからやらない」

このような状況は良くありません。いずれのケースにしても、上司に対して現場から返ってくるフィードバックは「方針に沿って実行した結果が好ましくなかった」というものではなく「方針が実行されなかった」というもののみです。

となると、方針が悪いのかは判断できず、現場が指示に従わなかったという事実のみが残ってしまいます。

指示に異論があればしっかりと伝える、それでもやるように指示されたらやる。納得できない場合は組織を離れる。それくらいの覚悟と自分軸を持たなければ強い組織、優秀な人間にはなれません。

自分の感情としっかり向き合って、自分の価値観に正直に行動できているかを振り返ります。

まとめ

リフレクション項目をリフレクションするのもまた面白いですね。評価項目を決めることでそれに向かった行動が決まってくるので、やはりどの観点で自分の塾を「良い」か「悪い」か判断するか決めておくのは大切です。

今回は実際に現場で教室運営を統括する教室長の目線でのリフレクション項目でした。明日は複数の教室を運営する塾長の目線でのリフレクション項目をご紹介したいと思います。

伊藤 哲志
伊藤 哲志
tyotto Inc. リードエンジニア / 1994 / 幼い頃からロボティクス・コンピューターサイエンスに触れたことでテクノロジーに深く興味を持つようになりました。AO入試で東京工業大学の情報工学科に入学してからは、学業と並行してIT企業でのインターンや教育工学研究室での研究を行い、教育×ITをテーマに活動を続けてきました。考えを文章で発信したり、組織づくりを行ったりすることも好きで、日常的に社内・社外に発信しています。